日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: A4-1
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第60回大会:口頭発表
日本の伝統文化に関する資料作成の授業実践
小学校教員養成課程の学生を対象とした教材研究として
扇澤 美千子*斉藤 秀子*薩本 弥生*伊藤 大河
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抄録

Ⅰはじめに
著者らが研究対象とする日本文化、伝統文化の授業で使用する資料についてみると、そのバリエーションは十分とは言えない現状にある。そこで、本研究では、小学校教員養成課程の学生を対象に日本文化・伝統文化に関する資料作成の授業を実施した。アクティブ・ラーニングの推進に伴い、授業への導入が進んでいるタブレットやPCを利用することにより資料作成の技術を身につけると同時に、効果的な資料とは何かを考える機会を設けた。日本文化・伝統文化について調べる・まとめる・発表することを通じて、テーマについての理解を深める力を養うことを目的とした。さらに、日本文化・伝統文化に対する意識調査を行い、学生の現状を把握し授業改善のヒントを得た。
Ⅱ授業実践について 
児童教育学科小学校家庭科教材研究の授業6時間で実施。対象学生85人(タブレット4人に1台配布:11班×2クラス)
〇授業計画[1時間目]課題の説明後、日本文化・伝統文化に関する事前調査を実施。グループおよびテーマの決定。担当箇所の決定
[2・3・4時間目]資料収集・インターネット検索・PPT作成
[5・6時間目]プレゼンテーション実施、学生相互による発表評価
授業進行に合わせてテーマ決定の報告、進行状況報告、作成資料のグループ内相互評価表の記入等を行った。
Ⅲ結果・考察
1 グループ内で日本文化・伝統文化に関する各自のテーマを決定し、調査・まとめ・資料作成・発表の準備を進めた。テーマは多岐にわたり、小・中学校での授業に使用するためのテーマとしては難しい内容もあったが、学生の興味・関心を重視した。
2 事前調査で日本文化・伝統文化として思い浮かぶものとして記述された言葉を分類した結果、78人からの回答で合計1033語(平均13語)であった。
3 日本文化・伝統文化の資料作成に関するアンケート結果から以下の結果が得られた。「小学校・中学校の授業で扱う日本文化としてどのようなテーマが考えられるか」との問いに対する事前調査の回答を整理すると日本文化、日本食、季節の行事の記述が多かったが、事後調査では日本食、季節の行事の回答が増加した。
外国に紹介したいテーマに関しては、事前・事後調査ともに日本食、きもの・和装、茶・華・書道、文芸等の記述が多かった。衣、食等は日常生活に近いテーマであること、また、書道は学校教育でも扱われる題材であることがその理由と考えられる。著者らはアニメ・マンガ等を文芸の分類とした。学生たちに、これらも日本発信の文化として認識されていることがわかった。
発表時のわかりやすく伝えるための工夫については、事前調査では体験型をめざす、実物を見せる、見学、映像の使用、イラスト・写真の使い方等、授業形態やPPTに関する記述が多かったが、事後調査ではイラスト・写真の使い方、内容、情報量、画面構成等のPPTに関する記述と話し方・声、発表態度、クイズ等発表者側に関する記述があった。このように、事後調査の回答は自身の発表体験や他者の発表を通して感じたことが反映された結果となり、資料作成とその発表がテーマを深めることにつながる可能性が示唆された。
Ⅳまとめ 
小学校・中学校で扱いたい日本文化および外国に紹介したいテーマについて、事前・事後調査の結果を比較すると授業で取り上げたテーマの影響が認められた。資料の作成・プレゼンテーションの実施は日本文化・伝統文化への理解を深めることへつながる学習であった。わかりやすく伝える工夫についても発表を通して資料作成に関する具体的な改善点が認識された。これらの結果を基に、今後の授業改善につなげたい。

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