日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: A4-5
会議情報

第60回大会:口頭発表
中学校における家庭科の実践的・体験的学習活動を充実させる要因から東京都中学校家庭科教員への調査から~
筧 敏子*大竹 美登利
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.研究の背景と目的:1998年の学習指導要領改訂から次期学習指導要領で問題解決的な学習と実践的・体験的な学習活動は重視されている。しかし、そのための授業改善になかなか取り組めず、実践的・体験的な学習活動を充分展開できていないのが実情である。そこで本研究では実践的・体験的な学習活動の取り組み方の相違にどんな要因が影響するのかを検討し、実践的・体験的な学習活動を充実させる方策を明らかにすることを目的とした。
2.研究の方法:本研究では実践的・体験的な学習活動を「家庭科の授業の中で展開される製作や実習などの実践的・体験的な学習活動に加えて、調べ学習、話し合い活動、他の教員や保護者・地域の人との協働授業」とした。これらの学習活動の取り組みの相違に与える影響を検証するため4つの仮説で検証した。調査項目は、①実践的・体験的な学習活動の項目、②教員の学校内での立場に関する項目、③教員の意識に関する項目とした。2015年7月に都内公立中学校621校に郵送し、記入後、返送してもらった。
3.結果:質問紙の回収数は155校(25.0%)、有効回収数は149校(24.0%)であった。
「仮説1:正規という立場の家庭科教員の方が、実践的・体験的な学習活動を取り入れた授業を展開している」では有意な差は無かったが、「写真類などを準備して説明」、「視聴覚教材を複数使用している」などの活動で正規教員が有意に高かった。なお、研修参加の有無に正規と非正規で有意差があり、研修参加できる正規教員の方が実践的・体験的な学習活動を取り入れていた。これらのことから、仮説1は検証されたといえる。
「仮説2:学校運営上の中心的役割をはたしている立場の家庭科教員の方が、実践的・体験的な学習活動を取り入れた授業を展開している」は「作業仮説2-1:学校運営上の部会の主任を担当している家庭科教員の方が、実践的・体験的な学習活動を取り入れた授業を展開している」と「作業仮説2-2:『総合的な学習の時間』の中心的役割を担当している家庭科教員の方が、実践的・体験的な学習活動を取り入れた授業を展開している」に分けて検証した。その結果、「作業仮説2-1」では有意な差がなく、「作業仮説2-1」は検証されなかった。「作業仮説2-2」では「総合的な学習の時間の中心的役割を担当」している教員の方が「調理実習3年間平均回数」、「話し合い活動」、「必要に応じたプリント類の作成」の活動が有意に高く、仮説2の一部が検証された。
「仮説3:周囲の人々からの家庭科や家庭科教員への評価が高いと感じている方が、実践的・体験的な学習活動を取り入れた授業を展開している」、「仮説4:授業改善意識が高い家庭科教員は、実践的・体験的な学習活動を取り入れた授業を展開している」の2つの仮説で、教員の意識に関する設問の因子分析で抽出された第1因子「高評価意識」第2因子「授業改善意識」を用いて分析した。「仮説3」では高評価意識の高い教員の方が「調理実習3年間平均回数」、「生活の課題と実践の3年間テーマ数」、「視聴覚教材の使用数と複数使用している」割合が有意に高く、「仮説4」では、授業改善意識の高い教員の方が「調べ学習を行った」、「他の教員や保護者、地域の人との協働授業を行った」、「写真類などを準備して説明」、「視聴覚教材の使用数と複数使用している」割合が有意に高く、仮説は検証された。
4.まとめ:第1に研修に参加した正規教員の方が研修に参加できない非正規教員より、実践的・体験的な学習活動を授業に積極的に取り入れていたことから、研修が保証された正規教員であることが、実践的・体験的な学習活動の取り組みを充実する為には重要であることが明らかになった。第2に、子ども達や保護者、教員集団からから高評価を得ていると意識している教員の方が、また授業改善意識が高い教員の方が、実践的・体験的な学習活動を積極的に取り入れていたことから、高評価意識や授業改善意識を持っていることは、実践的・体験的な学習活動を充実させるために重要であった。

著者関連情報
© 2017 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top