日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: B3-2
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第60回大会:口頭発表
家庭科における「専門」に関する検討
青木 香保里*志村 結美*日景 弥生
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キーワード: 専門, 家庭科, 教員育成
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抄録

目的
 平成27年12月21日中央教育審議会は「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上を目指して~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築の構築に向けて~」と題した答申を提出した。  
 答申は、「新たな知識や技術の活用により社会の進歩や変化のスピードが速まる中、教員の資質能力向上は我が国の最重要課題であり、世界の潮流でもある。」として、教員政策の重要性を掲げ、「教育の直接の担い手である教員の資質能力を向上させることが最も重要」と記している。また、「社会変化が加速し,また新しい教育への期待が高まる中、教員一人一人が、その職は高度に専門的なものであり、国家社会の活力を作り出す重要な職であるとの誇りを持ちつつ、高い志で自ら研鑽することの重要性」(何れも2頁)1)と記し、教師という職業が有する「専門」と教師の「研修」に言及している。
 本研究は、教育職員免許法改訂を目前に控えた現在、教師という職業が有する「専門」に着目し、1)家庭科に係る教育職員免許法の変遷、2)家庭科に係る教員養成の変遷、3)家庭科に係る研修の変遷について検討し、家庭科における「専門」とは何かを考える基礎的資料を得ることを目的とした。

方法
 教師という職業が有する「専門」に関わって、本研究では今津孝次郎による教師の「専門職性」「専門性」に関する概念に依拠する。今津は、「『専門職性professionalism』は『教職が職業としてどれだけ専門職としての地位を獲得しているのか』という点を問題にする教師の職業的『地位』に関わる概念であるのに対し、『専門性professionality』は、『教師が生徒に対して教育行為を行う場合に、どれだけの専門的知識・技術を用いるか』という点を問題にする教師の『役割』ないし『実践』に関わる概念」と整理している2)
 検討に際し用いた資料は、1)教育職員免許法に関する文献資料、2)教員養成の変遷に関する文献資料、3)研修の変遷に関する資料である。

結果
1)家庭科に係る教育職員免許法の変遷
 戦後の教育改革の中で教員養成制度は1949年「教育職員免許法」の成立をもって、教員の資質と能力は法律で定めるところのものに変わる。玖村敏雄『教育職員免許法施行規則 同法施行法施行規則解説(命令編)』(1949、学芸図書)において玖村は「教育職員免許法」の立法の精神として、「民主的立法」「教職の専門性の確立」「大学における教員養成の制度化」「免許の開放性と合理化」「現職教育の合理化」などに言及している。現行の教育職員免許法の改正に至るまで「教職に関する専門科目」「教科に関する専門科目」の最低修得単位数の変化が見られ、1998年改正教育職員免許法を境として「教科に関する専門科目」の最低単位数は半減し、現在に至っている。

2)家庭科に係る教員養成の変遷
 戦後の教育改革における教員養成制度の変化に伴い、教員養成は「目的養成制」と「開放制」のもと行われている。1991年の大学審議会答申による「大学設置基準の大綱化」を境として、大学の改組などが相次ぎ、教員養成を含めて「高度化」「専門化」などが謳われるようになり、現在もその様相にある。

3)家庭科に係る研修の変遷
 戦後の教育改革において教員再教育・現職教育施策の計画と実行、IFELによる中核となる指導者養成などに始まり、文部省(現:文部科学省)による現職教員の研修、都道府県による現職教員の研修、教員免許状更新講習など多種多様な研修が展開してきた。一方で、教員の多忙化や教員採用数の減少などの問題が継続している現状において、家庭科担当教員の採用と配置をみると一層の困難を抱えており、研修の充実が課題である。

引用文献
1)文部科学省HP(2017年4月1日閲覧)
2)今津孝次郎『変動社会の教師教育』名古屋大学出版会、1996年、43頁

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