日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: B4-5
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第60回大会:口頭発表
昭和40年代初頭における小学校家庭科の教育課程の改善
「鹿内瑞子旧蔵資料」を資料として
八幡(谷口) 彩子
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抄録

研究目的 演者は、日本の家政学史・家庭科教育史研究の一環として、戦後、文部省の教科調査官として小学校家庭科の教育課程行政に携わった鹿内瑞子氏の旧蔵資料を読み進めている。「鹿内瑞子旧蔵資料」は、昭和26(1951)年~昭和52(1977)年の小学校学習指導要領改訂までをほぼ網羅し、小学校家庭科の教育行政を把握する上で貴重な資料を含んでいる。すでに、昭和20~30年代における小学校家庭科をめぐる教育課程行政、へき地教育行政、施設・設備の充実施策、教材の状況等について検討を進めてきた。本研究では、「鹿内瑞子旧蔵資料」に含まれる昭和40年代初頭の小学校家庭科の教育課程の改善に関する資料を取り上げ、戦後における小学校家庭科の展開過程の一端を明らかにすることを目的とする。
研究方法 本研究では、国立教育政策研究所教育図書館所蔵「鹿内瑞子旧蔵資料」(1,139点)のうち、昭和43(1968)年7月に告示された(改正)「小学校学習指導要領」の家庭科に関する教育課程の改善のための審議過程を知ることができる昭和40(1965)~43(1968)年の資料約20点を用いる。
結果と考察
(1)『鹿内瑞子旧蔵資料目録』によれば、「鹿内瑞子旧蔵資料」に含まれる昭和43(1968)年の小学校家庭科の教育課程の改善に関する資料は、審議会・研究会等の議事録、実態調査、要望書、「小学校学習指導要領案」等に分類できる。このうち、小学校家庭科の教育課程の改善については、初等教育教育課程分科審議会(教育課程一般部会)、小学校教育課程(家庭)の改善に関する調査研究に協力する協力者委員会、両者を橋渡しする専門調査員という構造により、審議が進められている。
(2) 初等教育教育課程分科審議会(教育課程一般部会)における審議経過を綴った資料No.106に含まれる「昭和41年2月4日 教育課程審議会初等教育関係 専門調査員総会配布資料」により、発会となった昭和40年6月14日の文部大臣挨拶、初等中等教育局長諮問事項説明等とともに、小学校家庭科に関する専門調査員(5名)、調査研究協力者(17名;うち5名は専門調査員兼任)について知ることができる。小学校の他教科等の教育課程改善の動きと連携しながら、家庭科の教育課程改善に向けた審議が行われている。
(3) 小学校教育課程(家庭)の改善に関する調査研究協力者委員会の資料を綴った資料No.119にある「初等教育教育課程審議会関係総会等開催状況」(昭和42年10月27日)によれば、教育課程審議会総会は8回、初等教育教育課程分科審議会は34回、小学校家庭科の専門調査委員会は昭和41(1966)年2月4日~昭和42(1967)年10月16日までに63回と精力的に開催されていることがわかる。「小学校家庭科における改善すべき基本的事項(初等教育教育課程分科審議会)(昭和41年11月4日)」では、「教科の目標を一層明確に示すようにすること」「内容の精選を図り、指導の重点を明示すること」「他教科等との関連については特に考慮すること」「中学校の技術・家庭科との関連をじゅうぶんに考慮すること」「家庭生活についての理解は、学校教育全体のなかにおいても、深められるよう留意すること」などが記載されている。
(4) 小学校教育課程(家庭)の改善に関する調査研究会議資料・議事録を綴った資料No.107には、昭和41(1966)年7月8日から昭和42(1967)年8月16日までの13回に及ぶ小学校家庭科協力者委員会の議事録と配付資料が綴られている。「小学校家庭科の主なる検討すべき問題点」(昭和41年2月28日付)では、小学校家庭科の性格について明確にすること、教科の目標や内容に関する検討事項等が示されている。

参考文献:丸山剛史・左高美里・橋本昭彦(編集)『鹿内瑞子旧蔵資料目録(戦後教育改革資料19)』国立教育政策研究所(2006年3月)

本研究は、JSPS科研費17K00758の助成を受けたものである。

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