日本家政学会誌
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衣服を通しての顕熱移動速度と潜熱移動速度の推算
井上 尚子高橋 勝六
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2021 年 72 巻 11 号 p. 719-729

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抄録

 衣服を通しての顕熱移動速度と潜熱移動速度を衣服間空隙, 衣服の布, 詰め物層および外気境膜それぞれの熱移動係数および物質移動係数を用いて推算した. 衣服は4組のセット, すなわち, セットA : 下着, シャツブラウス, セーターおよびダウンコート, セットB : 下着, シャツブラウス, セーターおよびジャケット, セットC : 下着, シャツブラウスおよびジャケット, セットD : 下着およびシャツブラウスについて計算した. 計算条件は皮膚表面温度33℃, 湿度50%, 外気温-2~30℃, 湿度20~70%とした. 熱移動速度60 W/m2に対応する外気温はセットAで-2℃, セットBで12℃, セットCで17℃, セットDで24℃となった. 全熱移動速度に対する潜熱移動速度の割合はセットAではダウンコートに使用される布の物質移動抵抗が大きいので0.18と小さくなった. この布は布内の繊維体積分率が0.55のタフタである. 繊維体積分率が大きくなると布内の空気チャンネルの屈曲係数が大きくなって布の物質移動係数が小さくなる. 衣服セットB, CおよびDに対する潜熱移動速度の割合は0.3から0.6の間で外気の湿度が高くなると小さくなる. セットB, CおよびDに使用した布の繊維体積分率は0.33以下で, 布の物質移動抵抗は熱移動抵抗と同様に衣服間空隙の抵抗に比べて小さい. これらの衣服セットの潜熱移動速度の割合は衣服間空隙のものに近くなる.

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