2023 年 74 巻 8 号 p. 468-477
現金利用時に比べ, キャッシュレス決済利用時に支払いに伴う心理的な負担が小さく, 生活者はつい使いすぎてしまう傾向にあることが, これまで多く指摘されてきた. 一方, 使いすぎが過度に生じた場合, 生活者は家計を安定的に管理できなくなることも考えられる. このため, 生活者がキャッシュレス決済利用に伴う自身の行動特性を把握し, 家計を健全に保ちつつキャッシュレス決済の利便性を享受していくためには, このようなキャッシュレス決済利用に伴う個人の支払傾向の変化の特徴について知見を深めていくことが期待される. これを踏まえ本稿は, セルフコントロール能力とキャッシュレス決済の利用経験が, キャッシュレス決済利用時の支払意思額に与える影響について検討したものである. 検討の結果, セルフコントロール能力がクレジットカードやデビットカード利用時の支払意思額に与える影響については確認できなかったものの, クレジットカードやデビットカードの利用経験が, ポイント還元等の特典がない場合であっても, クレジットカードやデビットカード利用時の支払意思額を高めることが分かった.