家政学雑誌
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米の貯蔵温度と飯の食味に関する研究
鈴木 やす子松元 文子
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1971 年 22 巻 5 号 p. 288-295

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抄録

1. 米を低温に貯蔵した場合と室温に貯蔵した場合とでは貯蔵月数が進むにつれ、官能的評価において両者の質の差がだんだん増大してくる。夏を過ぎると室温に貯蔵した米は低温に貯蔵した米にくらべてその飯の外観、香り、うま味、かたさ、粘りともに劣り、好まれなくなる。
2.浸水の効果という観点から行なった官能検査では、室温に貯蔵しておいた米は夏を越すと、浸水して炊飯しても、加熱時間を延長しても何ら効果がないということがわかった。また、低温に貯蔵しておいても、貯蔵期間が長くなれば、炊飯前の予備浸水は米をおいしく炊く上での有効な手段となってくるし、加熱時間もある程度延長しないとおいしい飯にはならないようである。
3.ガスクロマトグラフによる香り成分の分析ではすでに報告されているように、ヘキサナールが室温貯蔵米により多く認められた。ヘキサナールの他に本実験ではアセトンかプロピオンアルデヒドと思われる成分が低温貯蔵米に多く認められた。
以上、古米をおいしく炊くという目的で、浸水の効果及び加熱時間の長短という観点から実験を行なってみたが、浸水や加熱時間の延長は米自身の変質の改良に対し、全く無効であった。特に香りの変化は著しく、この香りは官能検査の際にも重要な因子となっており、まず香りの変質を抑える手段を考えない限り、古米をおいしく炊くことは不可能なようである。

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