抄録
前報に引き続き, 同様の7種類の一時性, 3種類の耐洗たく性防炎加工布を用いて, とくに安全性の面から加工条件および防炎性能と燃焼時における煙およびCO, CO2の発生量との関係について未加工布との比較検討を行った.
その結果を要約すると次のようになる.
1) 煙濃度, CO, CO2いずれの濃度も未加工布と比較すると付着率8~10%, LOI28~30のところにおいて急激な減少をみせ, 前報で示した防炎性能を備えた条件においてcriticalな発生量の減少を示した.
2) 耐洗たく性加工布については, ノンソーピングでは発煙量が多く, ソーピングと洗たくにより減少したのに対し, CO, CO2はノンソーピングでは発生量が少なく, ソーピングにより難燃性の低下に伴って発生量が増大したが, 洗たくによる加工剤脱離により減少した.
3) 難燃性の十分な加工布はCO, CO2の検出が5分以内に終止し人体への影響の面でも好ましい結果がみられた.
4) ホウ酸・ホウ砂は最も少ない付着量で最も防炎効果が大きく, その上人体への影響も少ないことが示された.この加工剤は一般消費者が日常手軽に購入できるというメリットとともに, 一時性であっても洗たく後糊つけ程度の簡単な操作で十分効果を発揮するところに注目したいと考える.化学的, 工業的レベルにおいて研究開発されることのみに頼り, 安全性の面で保証不十分であったり, コスト面での高騰をまぬがれない市販品に目を向ける前に, 消費者自身手近に安価で入手でき, まったく無害である薬剤を用いて日常生活に取り入れる試みをすることこそ防炎加工製品の一般化の第一歩として重要な役割を占めるものであり, このような方向に向かって研究することも家政学の一つの役割であろうと考える.