抄録
脂質組成を異にするパンをマイクロ波加熱したところ, 伝熱加熱と比べ次のような特色を示した.
1) 脂質組成とは無関係に, すべての供試パンで膨潤度が大きく, ゲル化が促進されていた.
2) 無添加パン (脂質としてショートニングのみ添加) では, 未膨潤なでんぷん粒とでんぷんゲルの共存が確認され, パンが非常に硬くなった.
3) 乳化剤添加パン (モノグリセリド添加) では, 添加量の増加に伴って急激にでんぷんゲルが減少し, パンがもろくなった.
以上の結果は, パンの硬化現象に関して脂質の役割が大きいこと, “セメント” 的なゲル状物質の存在が硬化原因として重要なことを示している.