家政学雑誌
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刃渡りの長い包丁による切削について
包丁の切れ味に関する研究 (第9報)
岡村 多か子竹中 はる子寺島 久美子
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1983 年 34 巻 7 号 p. 398-404

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抄録

以上のことから明らかになったことは,
1) 刺身包丁の特長として, 長さは大別して大体三つのグループに分けられ, 包丁の長さは異なっても, 重量はいずれも, ほぼ110g前後であった.このことから, この110gという重量は, 長さに関係なく刺身包丁として使いやすい重量として, 長い間の習慣から得られた結果ではないかと推察される.
厚さ, 刃角は, 元刃より切っ先方向に厚さを減じ, 刃角も鋭くなっている.
2) これらの包丁を使って, 刺身用魚肉を切る実験を行った結果, 切削の際, 長く引いて切った切削面と, 短く引いて切った切削面を比較すると, 長く引いた切り方のほうが, 切り込み時間は長く要するが, 組織を損傷することが少なく, その上, 表面が刃の摩擦により平滑に仕上がり, したがって光沢があった.
3) 刺身の仕上がりは表面に光沢のあることが望まれているから, 包丁の刃渡りを長く使って引いた切り方が, 刺身の作り方として適しており, また, 刃の薄い, 刃角の鋭いものが美しい仕上がりを得るのに適していることが明らかになった.
このことから, 刺身包丁が, 細長い形状に作られた理由も明らかにされたと考えられる.

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