日本家政学会誌
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蹲鋸による体形変化の3次元的把握と下衣設計への応用
松山 容子小泉 晴美
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1996 年 47 巻 2 号 p. 169-178

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抄録

運動機能性の高い衣服設計には, 人体の運動による変形の情報を取り込むことが必要である.本研究では蹲踞動作をとりあげ, 若年成人女子10名の背面体表面形状を非接触3次元計測し (一部石膏包帯法) 主として次の結果を得た.
(1) 体表面展開図の形状は, 静立時と蹲踞動作時とでは著しく異なる.
(2) 体表面の変形の様相には個人差が少ない.本研究の対象部位は体表の変形方向により, 6部分に区分された.なお, 変形の方向は着用された衣服では布の歪み方向に相当する.
(3) 体表は, 後ろ正中線, 肩甲問線, 肩甲線の3本の垂直方向基準線に沿い, 胴囲線レベルから腹囲線レベルで約50%の伸びを示し, 臀溝付近では約100%の伸びを示す。水平方向には体表の伸縮は少ない.
(4) 本研究で求められた体表の伸縮量とその部位とは, 高度の運動機能性を実現する場合に資料となるものである.これらは, ズボンを伸縮性の乏しい布地で作る場合には股関節よりも上部で加えるゆるみの最大量と部位に対応するものであり, その適切であることは着用テストで確認された.また, 伸縮性のある布地のズボン類の場合には, 布地が人体に拘束を与えずに伸縮すべき量となるであろう.

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