日本家政学会誌
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Streptococcus salivarius subsp. thermophilus 510へのアスパラギン酸の発育阻害作用
中嶋 昭正
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1996 年 47 巻 7 号 p. 663-670

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抄録

種々のアミノ酸のStreptococcus salivarius subsp.thermophilus 510の発育におよぼす影響について検討し, 次の結果を得た.
(1) 脱脂乳培地において, 種々のアミノ酸を100mlの培地あたり50mg添加し, この菌の発育におよぼす影響について, 酸生成を発育の指標として検討したところ, L-グルタミン酸に僅かな発育促進の傾向が, L-アスパラギン酸, L-イソロイシン, L-メチオニン, L-フェニルアラニン, L-セリン, L-スレオニン, L-システイン, L-シスチンに明らかに発育阻害作用が認められた.とくに, L-アスパラギン酸はきわめて著しい発育阻害作用を示した.
なお, L-アスパラギン酸は100mlの培地あたり10mgでもかなりの阻害作用を示した.
(2) L-アスパラギン酸25mgを加えた脱脂乳培地100mlに, 種々のアミノ酸50mgを添加したところ, 24時間の培養で, L-グルタミン酸のみがL一アスパラギン酸に拮抗作用をもち, 阻害作用からほぼ回復した.
48時間の培養では, L-ヒドロキシプロリン, L-リジン, L-プロリン, L-トリプトファンは, L-アスパラギン酸の阻害作用を回復した, L-アラニン, L-イソロイシン, L-メチオニン, L-フェニルアラニン, L-セリン, L-スレオニンはL-アスパラギン酸の阻害作用を回復せず, 若干阻害傾向があり, L-システイン, L-シスチンはかなり阻害した.
(3) L-グルタミン酸のほぼ等量の添加で, L-アスパラギン酸の阻害作用から回復することができた.
(4) ペプトンー酵母エキスーブドウ糖培地で, 660nmでの濁度を発育の指標として検討したところ, 100m1の培地あたり25mg以上のL-アスパラギン酸の添加は著しい阻害作用を示した.また, L-グルタミン酸は等量でL-アスパラギン酸の阻害作用をほとんど回復し, 倍量ではいくぶん発育促進の傾向が認められた.

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