1996 年 47 巻 7 号 p. 685-691
カーボンブラックおよびα-酸化鉄 (III) 汚れの洗浄性と再汚染性に及ぼすHPCの効果を種々の条件で検討したところ, つぎのことが明らかとなった.
(1) DBSの低濃度領域においては, 汚れの種類にかかわらず, DBS濃度の増加とともに, 洗浄率 (D) は漸次増大し, 一方, 再汚染率 (S) は漸次減少し, 両者の傾向はよい対応を示した.DBSのさらに高い濃度においては, Dおよび5ともに一定となる傾向が認められた.カーボンブラック汚れでは, HPCを添加した系の方が添加しない系よりも, Dは大となり, Sは小となる傾向が認められたが, α-酸化鉄 (III) 汚れでは, 逆の傾向が認められた.
(2) HPC濃度の増加とともに, カーボンブラック汚れでは, Dは漸次増大し, 一方辞は漸次滅少し, 両者の傾向はよい対応を示した.HPCの高い濃度では, 両者ともにほぼ一定となる傾向が認められた.一方, α-酸化鉄 (III) 汚れでは, Dにおいて一つの極小が認められた.
(3) 汚れの種類にかかわらず, Dおよび3に及ぼすHPCの分子量の効果について, 最適な分子量範囲があることが認められた.最適な分子量の範囲は汚れによってやや相違した.
(4) 繰り返し洗浄においては, 汚れの種類にかかわらず, Dは全体として洗浄回数の増加とともに漸次減少し, 一方, 5は増大する傾向が認められた.カーボンブラック汚れでは, HPCを添加した系の方が添加しない系よりも, Dは大となり, Sは小となる傾向が認められたが, α-酸化鉄 (III) 汚れでは逆の傾向が認められた.
これらの結果から, HPCの分子量と濃度を適当に選べば, HPCはカーボンブラック汚れに対してすぐれた再汚染防止効果を示すが, α-酸化鉄 (III) 汚れに対しては, 汚染を促進することが明らかとなった.