日本家政学会誌
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水不溶性食物繊維の煮沸操作がIn Vitroにおけるグルコースの拡散速度に与える影響
加藤 陽治田中 順子
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2000 年 51 巻 2 号 p. 121-127

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抄録
人参, 牛蒡, 玉葱, ブロッコリー, ほうれん草, 胡瓜および林檎の各水不溶性食物繊維が, in vitroにおけるグルコースの拡散速度に与える「煮沸操作」の影響を調べた.
(1) いずれの水不溶性食物繊維でも, グルコースのin vitroにおける拡散阻害能が煮沸により増加した.
(2) その増加は熱水可溶性画分ではなく熱水不溶性画分に主に依存した.しかし, 共存する熱水可溶性画分が, 熱水不溶性画分のもつ阻害能を増加させるものと, 減じさせるものとの二つのタイプがあることがわかった.前者に人参, 牛蒡, 玉葱, ブロッコリーが, 後者にほうれん草, 胡瓜, 林檎が, それぞれ属した.
(3) いずれの場合でも熱水可溶性画分はペクチン様物質から成っており, 煮沸時間の増加に伴いその量も増加した.その分子量分布を調べると, 分子量4万以上のものが, 人参, 牛蒡, 玉葱, ブロッコリーでは約50%を占めていたが, ほうれん草, 胡瓜, 林檎では 10%以下であった.
(4) このことから, 煮沸により可溶化する水不溶性ペクチン様物質の分子量が小さい (煮沸操作により低分子化しやすいペクチン様物質) 場合は, それが熱水不溶性画分構成多糖間で形成されている種々の架橋構造の空隙に入り込み, 熱水不溶性画分のもつ拡散阻害能を減じさる.一方, 煮沸により可溶化するペクチン様物質の分子量が大きい (加熱により低分子化しにくいペクチン様物質) 場合は, 高分子ペクチン様物質と熱水不溶性画分の両者の阻害能が相俟って効果の増加がみられると考えた.
本報文の一部は第40回および41回日本家政学会東北・北海道支部研究発表会において報告したものである.
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