日本家政学会誌
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饅頭生地の膨化におよぼすEnterohacter cloacae GAOの影響
田村 朝子長野 宏子大森 正司庄司 善哉荒井 基夫
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2003 年 54 巻 2 号 p. 183-188

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抄録

E. cloacae GAOを用いて饅頭を製造すると, 酵母を用いたものより, 表面がなめらかで, きめの細かいものができあがる.また生地の膨化の仕方が酵母と異なることから, 生地発酵に関与するタンパク分解酵素の作用の部位が異なるものと推測された.この酵素の作用の違いを明らかにするため, 小麦タンパク質のグルテン, グルテニン, グリアジンを基質として培養液に作用させ, 分解したタンパク質の挙動をLowry法と電気泳動で確認した.その結果, Lowry法においては, E. cloacae GAO, 酵母ともグリアジンを基質にした場合に最も可溶化したタンパク質が多く認められた.電気泳動においても, グリアジンを基質にした場合, E. cloacae GAOでは, 18kDa付近に酵母には認められなかった独自のバンドが検出された.電気泳動パターンに, E. cloacae GAOと酵母とで違いが認められたことから, 生地膨化の際に, 小麦タンパク質のグリアジンに作用する酵素の部位がE. cloacae GAOと酵母では異なっており, このことが膨化生地の形状の違いにつながっているものと推測された.

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