総合健診
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原著
総合健診受診者における慢性腎臓病の認知度、食塩摂取量
高橋 敦彦
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 40 巻 5 号 p. 504-511

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抄録

 慢性腎臓病chronic kidney disease(CKD)は末期腎不全の予備群として、あるいは、心血管疾患の発症や死亡の危険因子として注目されている。総合健診受診者におけるCKDの認知度、自己申告による食塩摂取量と尿中食塩排泄量、CKDスクリーニングとしての推算糸球体濾過率(eGFR)評価法を横断的に検討した。
 2010年10月~2011年8月に総合健診を受診した治療中疾患・経過観察中の慢性疾患のない男女107例(49.6±11.4歳)を対象とした。
 通常の健診項目に加え、本研究用に作成したCKDに関する自己記入式質問紙を施行し、健診当日に回収した。さらに血清シスタチンC、随時尿中Na濃度、随時尿中アルブミン濃度、随時尿中クレアチニン濃度を測定し、推算式により随時尿中NaCl排泄量、eGFRを求めた。
 対象の56.1%がCKDを認知していなかった。尿中NaCl排泄量(7.8±2.0g/日)は、3.3~12.0g/日に分布した。自己申告による食塩摂取の多寡による尿中NaCl排泄量に差はなく、一日の食事量が多いと回答した者の食塩摂取量が多かった(p=0.02)。クレアチニンによるeGFR(eGFRcreat)値とシスタチンCによる(eGFRcys)値は正相関(r=0.576、p<0.0001)を示した。eGFRが 60mL/min/1.73m2 未満であったのは、eGFRcreat値が5例、eGFRcys値が1例であった。尿蛋白とGFRとは直接関連がなかった。
 総合健診受診者におけるCKDの認知度は低く、健診を通じた啓発が必要である。自己申告による食塩摂取量と尿中NaCl排泄量とは乖離があり、問診による食塩摂取量評価の信頼性は低いことが示唆される。CKDスクリーニングには尿蛋白とeGFRの両者を測定する意義があり、加えてeGFRcreat値を用いることにより、CKDの見落としを減らせる可能性がある。

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© 2013 一般社団法人 日本総合健診医学会
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