2018 年 45 巻 5 号 p. 626-634
【背景】ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)とは、「運動器の障害のため移動機能の低下をきたした状態」であり、転倒リスクが高まり寝たきりにつながる状態である。特に運動習慣のない者の場合、運動器機能低下の進行の悪循環を起こすため、早い段階で運動習慣を持つことが望ましい。
そこで、移動能力を簡便に知ることができるロコモ度テストと運動習慣のない者でも安全で取り組みやすいロコモーショントレーニング(以下ロコトレ)の指導を特定保健指導実施時に取り入れ、ロコトレの継続状況をアンケート調査したので報告する。
【対象と方法】対象は特定保健指導面接時に運動習慣のない者、もしくは軽度運動実施者で希望者73人。ロコモ度テスト(①立ち上がりテスト②2ステップテスト③ロコモ25)とロコトレ(①片足立ち②スクワット)を指導し、実施状況に関するアンケート調査を3か月後と6か月後に行った。
【結果】年代別のアンケート回答率は40代32.1%、50代61.3%、60代64.0%、70代90.9%で、年代が上がるごとに高くなった。このことから年齢が上がるにつれロコモへの関心が高くなることが示唆された。
ロコトレの継続率は年代別に40代38.9%、50代68.4%、60代81.3%、70代70.0%であり、40代が最も低く、60代が最も高かった。できない理由は、70代のみに体の不調に関することが挙がり、それ以外は意識や時間に関することを挙げていた。
【結論】運動に関する支援について、40代は個別での幅広い運動の提案が必要であり、50代はロコトレが運動を始めるきっかけとなり得る。60代では運動の習慣化を図り、70代には身体状況の変化の確認と正しい運動方法を伝えることが重要である。このことから特定保健指導時にロコモ度テストを行い、ロコトレを指導することは運動習慣獲得のチャンスとなり得る。そして健康寿命の延伸のためにも、後期高齢者の年代になるまでに、個々に合わせた方法で運動の習慣化を目指したい。