総合健診
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症例報告
当施設受診者における異常ヘモグロビン検出状況について
佐藤 智子白幡 季大木下 正行小森 崇司三代 久美子中道 陽子木下 由美子矢口 通子栗原 達哲眞崎 正山縣 文夫河津 捷二及川 孝光
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2019 年 46 巻 5 号 p. 468-479

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抄録

 ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病の診断や治療などに活用されている。当施設でHbA1c測定に用いている高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法[東ソーHLC-723G11(G11)]では、異常ヘモグロビンの影響により偽低値または偽高値となる例があり、結果報告には注意が必要である。今回、我々はHPLC法において異常ヘモグロビンの存在が示唆される検体について、異常ヘモグロビンの検出頻度およびその内容の詳細について検討したので報告する。

 当施設の異常ヘモグロビン検出状況確認のため、2016年8月から2017年7月までの1年間に、当施設人間ドックおよび健康診断を受診し、HbA1cの測定依頼のあった検体(総数104,316例)のうち当施設においてクロマトグラムの異常パターンなどから異常ヘモグロビンの存在が示唆された43例について、東ソー社の協力を得て更なる精密分析後解析を行った。

 これらの43例をG11で得られたクロマトグラムの異常パターンで分類すると、4パターンに分類が可能であった(A~D)。また、クロマトグラムから異常ヘモグロビンを強く疑うパターン、あるいは測定機種によりパターンの違う例があることが推定された。

 アフィニティーモードによるHbA1c値に対してG11による初検値が、低値が38例(88.4%)、高値が5例(11.6%)であった。

 43例について異常ヘモグロビンの影響が示唆されたことから、当施設での異常ヘモグロビンの検出率は0.041%と推定された。

 精確なHbA1cデータ報告のため、HPLC法の特性を理解し、異常ヘモグロビンの影響の有無を確認したうえで報告が必要である。本検討より異常ヘモグロビンの影響が示唆され、最終的に参考報告値で報告した例は全体の0.041%ではあるが、分析装置のエラーメッセージ、正常クロマトグラムとの違い、HbF高値検体、関連項目とのバランスなど検査技師による確認が精度の高い結果報告につながるものと考える。

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© 2019 一般社団法人 日本総合健診医学会
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