総合健診
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日本総合健診医学会 第48回大会
日本総合健診医学会 第48回大会・教育講演2 糖尿病診療の現状と課題─高齢2型糖尿病患者への対応─
吉岡 成人
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2020 年 47 巻 5 号 p. 553-558

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抄録

 1970年には人口の7.0%にすぎなかった高齢者は、2019年には人口の25%以上となり、1人の女性が生涯に生む子供数は1.42となっている。日本における少子高齢化は極めて速いスピードで進行し、高齢化のピークをむかえる2040年以降には、高齢者の医療費が医療費全体の8割近くになると試算されている1)

 高齢者の増加とともに、高齢2型糖尿病患者も増加している。2018年の国民健康栄養調査によれば、HbA1c6.5%以上または糖尿病の治療を受けているものは、男性の18.7%、女性の9.3%、70歳以上では、男性の24.6%、女性の15.7%と、加齢とともにその数が増加している。糖尿病患者の高齢化とともに、糖尿病の併発症としての、認知症、がん、骨折、うつ病、歯周病などが患者のQOLを低下させる大きな要因となる。さらに、高齢糖尿病患者では高血糖自体が血管障害のみならず、サルコペニア、フレイル、低栄養、心不全などの老年症候群をきたす要因となり、加齢に伴う経年的な腎機能の低下は治療に伴う低血糖のリスクを増強する。

 高齢の患者にどのように対応するかは簡単なことではないが、若年成人や前期高齢者で示された予防医学的なエビデンスが後期高齢者や介護が必要な高齢糖尿病患者にあてはめることが妥当かどうかを十分に勘案したうえで、最小限の薬剤を適切に処方し、マイルドな血糖管理を行うという基本的な姿勢が重要なのではないかと思われる。

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© 2020 一般社団法人 日本総合健診医学会
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