2020 年 47 巻 5 号 p. 559-563
胆道がんは、日本では決して珍しいがんではなく、年間2万人以上が診断されており、男性では8番目に、女性では7番目に多いがんである。50歳代から増え始め、高齢者に多くみられる現状で、その治療選択に難渋する場合もみられる。手術の侵襲性や抗癌剤の選択肢が狭いこと、その治療反応性、そして予後を見極めた上でどのタイミングで緩和ケアに繋げるかといった諸問題が存在する。
予防医学的な観点からは、この疾患をいかに早期に発見し、治療に繋げられるかが急務である。胆道がんの中でも、胆嚢がんは、胆嚢結石、膵胆管合流異常、先天性胆道拡張症、胆嚢ポリープなどが危険因子で、前2者との関連性は高い。健診における超音波の役割は大きく、胆嚢がんの診断には必要不可欠な検査である。一方で、胆管がんの危険因子は、先天性胆道拡張症、肝内結石、潰瘍性大腸炎、印刷業の職歴などだが、いずれも合併頻度は高くなく、健診の場でも肝機能障害や胆管拡張などの超音波異常から拾い上げるしかない。
胆道がんを考える場合、他のがんとの違い、その特殊性を理解していないと、間違った情報が患者に渡り、その後の経過や余命に影響を及ぼすケースがある。消化器全般を扱う消化器内科医でも、胆道領域のがんは、慎重な判断と、わかりやすい説明、全人的なケアが要求される。
胆道がんは、通常の健診を受けていても初期にはみつけられず、進んだ段階で発見されることもあり、少しでも早期発見に繋げるべく、健診分野で何が出来うるのかを考えていきたい。