2024 年 51 巻 5 号 p. 441-449
【背景】健康診断の際、画像検査や血液データから、本来の目的とは異なる疾患が発見されることがある。これら健診データにおける偶発疾患について、当院健診センターの取り組みを報告する。
【対象】I.6ヶ月間で当院ドックで肺ヘリカルCTを施行した2,426名が対象。II.1年間で当院ドックを受診した13,550名が対象。
【方法】I.CTで確認された冠動脈石灰化に対して精密検査を推奨。冠動脈リスク因子や有意狭窄の有無について検討した。II.低ホスファターゼ症(hypophosphatasia: HPP)は遺伝子変異によって発症する先天性代謝異常で、血清ALP値の低下が診断基準の一つである。血清ALP値が低下(男性33U/L以下、女性29U/L以下)した症例に精密検査を推奨しHPPの有病率を検証した。
【結果】I.CTを施行した2,426名について検証し、冠動脈石灰化を296名(12%)に認めた。石灰化陽性者は、陰性者に比べ、eGFRを除いた冠危険因子の保有率が有意に高かった。石灰化を有した296名中80名に医療機関受診と検査結果を確認できた。80名中16名にPCI(経皮的冠動脈形成術)が施行され、糖尿病の有病率が有意に多かった。II.13,055名(男性8,607人、女性4,943人)中、79人がALP低値に該当し、遺伝子外来への受診案内を行った。12人が遺伝子外来を受診し、10人(男性5人、女性5人)が遺伝子検査陽性であった。
【考察】健診で見つかったこれらの疾患は、当初の健診目的とは無関係であるが、重篤な合併症予防や、未診断の疾患診断につながると考えられる。大量のデータを扱う健診だからこそ、未発見の疾患に対する配慮も必要である。一方で健診結果の予後追跡や、疾患の啓蒙の難しさに課題があると思われた。