総合健診
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経鼻-細径内視鏡によって発見された食道, 胃表在癌症例の報告
大野 仁樫原 英俊佐藤 貴子高橋 行子堺 泉岡崎 睦也岩崎 政明田村 政紀
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2002 年 29 巻 5 号 p. 890-893

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抄録

高齢者健診用に開発された経鼻挿入による直径6mmの細径内視鏡を用いた上部消化管検査が, 従来の経口内視鏡 (XQ-30) 検査と比べ苦痛を軽減するか否かをまず検討するため, 各々61名, 60名に検査を施行した後, 苦痛の程度を「苦痛なし」から「とても辛い」まで5段階分類した感想のアンケート調査を施行した結果, 回答比率の分布において, 経鼻内視鏡群では経口内視鏡群に比し有意に苦痛の軽減を認めた (X2=16.8, DF=4, P<0.01) 。
次に, 経鼻内視鏡を健診の二次精査としてではなく, 以下のような症例に限って, 約7年間, 使用を継続し, 発見癌の検討を行った。
対象は, 身体的あるいは年齢的理由のため十分なX線検査が困難で内視鏡による精査を希望した症例, X線検査所見で異常の有無が曖昧な症例, 健診後消化器症状が出現し外来を受診した症例, 潰瘍や粘膜下腫瘍など良性疾患の健診後フォロー例とした。
結果, 経鼻内視鏡施行例は, 670例 (男492例, 女178例) で, 年齢は, 59.8±11.5歳であった。発見胃癌例は, 5例 (うち, 早期癌は, 3例, 全例m癌) で, 発見食道癌は, 2例 (m癌とsm癌) であった。胃食道癌の発見率は, 1.09%であり, 表在癌の発見率は, 0.75%であった。さらに発見表在癌5例のうち, X線検査偽陰性例が3例あった。また粘膜切除術施行例が3例あった。
経鼻-細径内視鏡は, レントゲン偽陰性の表在癌の発見も可能であり, 苦痛の軽減や被爆の回避を主目的としたスクリーニング検査には, 使用可能であることが示唆された。

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