総合健診
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中年男性における血清脂質, 血糖値の加齢と肥満による変化
船津 和夫山下 毅本間 優大川 登斗米 馨横山 雅子近藤 修二濱名 元一中村 治雄
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2003 年 30 巻 5 号 p. 519-525

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抄録

生活水準が比較的均一な30~60歳の男性2, 719名を対象として, 1992年度における肥満度を基に, やせ群, 標準群, 肥満群の3群に分け, 7年間の血清脂質, 血糖値の変化を統計学的に比較検討した。さらに, 対象者の各群を体重非増加者と増加者に分け, 同様の検討を行った。肥満度は各群で7年間に増加し, 増加の程度はやせ群で最も大きかった。総コレステロール (TC) , LDL-C, 中性脂肪の増加の程度もやせ群で最も大きかった。これに対し, HDL-C, 血糖は肥満群での増加が他群より有意に大きかった。体重非増加者と増加者の検討では, 血清脂質は前者が後者に比べ, 増加の程度は低かったが, 血糖とHbAlcについては両者間の増加の程度に有意差はみられなかった。加齢のみによる変化を示すと考えられる体重非増加者での検討では, 7年間にLDL-Cはわずかに低下しているのに対し, HDL-Cは増加し, 中性脂肪はほとんど不変もしくは若干減少していることから, 肥満の有無に関わらず, 加齢とともに血清脂質値は改善することが判明した。また, この血清脂質の改善効果はやせた人より, 肥満者でより大きかった。一方, 血糖とHbAlcは体重の増加, 非増加に関わらず, 7年間に同程度に増加し, やせた人より, 肥満者での増加が大きかつた。体重非増加者と増加者内各群の飲酒, 喫煙, 運動量に差がないことから, これらの血清脂質, 血糖値の変動の主因として加齢と体重増加が考えられた。
以上の結果から, 中年男性における非肥満者と肥満者では, 肥満度, 血清脂質, 血糖の推移が異なり, 非肥満者では肥満度, 血清脂質, 肥満者では血糖の推移により気を配る必要性が示された。また, 加齢のみの影響として, 血清脂質は改善方向に, 血糖は肥満度に応じて増悪方向に推移するが, 加齢に体重増加が加わると, 血清脂質までも増悪することから, 中年男性にとって体重コントロールが重要であることが示唆された。

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