総合健診
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最近の婦人科検診の問題点
―特に子宮頚がん検診について―
落合 和彦渡辺 明彦
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キーワード: 細胞診, HPV感染, 自己採取法
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2004 年 31 巻 5 号 p. 631-636

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抄録

細胞診による子宮頚がんスクリーニングは, 有効性の実証された数少ないがん検診の一つであり, 子宮頚がんによる死亡率の低下に寄与してきた。しかし, さまざまな社会情勢の変化により, これまでに確立された子宮頚がん検診体制にいくつかの問題点が浮かび上がってきた。第一の問題は受診者の固定化, 高齢化による子宮がん発見率の低下である。一方で, 子宮頚がんおよびその前癌病変は, 確実に若年者に増加している。これは, 子宮頚がんの発生と深く関わっているHPV感染が, 性行動の若年化と相まって増加していることに他ならない。第二の問題点としては, 子宮頚がん検診としての自己採取検体が増加していることである。自己採取法は以前より精度に問題があることが指摘されてはいるものの, 検診者にとっての抵抗感も少なく簡便であることもあってか東京都ではこの5年間で約2倍に増加している。自己採取による標本は細胞数が少なく, 変性細胞が多いことが細胞診としての大きな問題点であるが, これらの検体からHPVを検出してみると, 施設において医師が採取するのと劣らない成績が得られた。HPVを一次スクリーニングとして用いるには, 費用効率を含め, いまだ問題も多く残されているが, 少なくとも自己採取による子宮頚がん検診を行うのであればHPV検査を併用することによって施設検診への動機付けになるのではないかと考えている。

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