人間と生活環境
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ヒトの環境適応と地球環境
森本 武利
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1994 年 1 巻 1 号 p. 34-39

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抄録

地球環境の温暖化が問題となっているが,人類がどの程度の温度変化に適応することが可能であるかという観点からの討議は少ない。現在の日本の温度環境のもとで,高温による障害が年間150例以上発生する年のあること,またその4割が高齢者に認められることを指摘した。高温障害はその発生を知識さえあれば予防出来るものであり,その発生機序およびその予防法について概観した。ヒトの体温調節機構としては,低温環境下ではまず行動性体温調節が起こり,それがカバー出来ない部分が生理的な反応によって調節されている。一方高温での体温調節は環境温が30℃を越えると直ちに発動し,また循環および体液の調節機構に影響を与え,暑熱障害になりやすい。過去100万年の間に約9回の氷河時代があり,人類がこの間に進化してきたことを考えるとこの現象が理解しやすい。ヒトの温暖適応能についての理解がより要求され,また環境保護の重要性が示唆される。

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© 1994 人間-生活環境系学会
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