近年、高齢者の家庭内における不慮の事故が多く、そのうち、住宅に係わる事故の死因で多いのは、「浴槽等での溺死及び溺水」である。そこで、本研究では、高齢者の浴室での事故を防ぐために、高齢者が居住する住宅の浴室環境の現状を明らかにすることを目的とした。高齢者が居住する浴室環境について実測調査を行い、浴室環境と世帯構造、身長および年齢との関連について分析した。195名の高齢者を対象に調査し、次のような結果を得た。高齢者単独世帯ほど推奨基準を満たしていないものが多く設備面の不備も多くみられた。身長の違いにより浴室に対する不満の内容が異なり、身長の高低の幅に対応した推奨基準の必要性が明らかとなった。年齢別では、子供世帯と同居世帯の後期高齢者の住宅の方が、浴室のサイズ面、設備面で安全対策がなされていた。今後は、単独世帯だけでなくすべての世帯において、年齢や身長に応じた浴室サイズや設備の改善が求められる。