パイロットスタディとして大阪と秋田で冬期に入浴と排泄の模擬行動を観察し,高齢者におけるヒートショックの状況を検討した.さらに,全国調査で収集した室内温熱環境の資料を用いて,浴室とトイレの暖房設備等と気温の関係,居間との気温差,高齢者の温冷感を検討した.パイロットスタディでは寒冷地において居間と他の部屋の気温差が大きく,居間から浴室やトイレに移動したときに大きな血圧上昇を示すものがいた.全国調査の資料より,居間と浴室やトイレとの気温差は夕方8時前後に最大となった.同じ温冷感であるにもかかわらず,浴室やトイレでの実際の気温は居間の気温よりも低かった.高齢者は身体にストレスを受けているが,浴室やトイレの寒さには寛大であるように思われる.居間と浴室の気温差は浴室での死亡率と相関する傾向にある.