抄録
夏季の暑熱環境悪化により屋外における滞在者や歩行者の行動的適応が注目されている。そのため、日傘使用者の人体生理反応やその周辺の微気候に与える影響を分析し、その実態を明らかにすることを目的とする。本論文では、CFD解析を用いて日傘の保持や日射透過率が歩行者の暑熱環境適応効果に与える影響の評価を行った。3ケースの解析が行われた。Case1では日傘を持たない場合、Case2では日傘を傾けて持ち透過率が30%の場合、Case3でもCase2と同様に日傘を傾けて持ち透過率が15%の場合を想定した。日傘の日射透過率の減少は、人体表面に到達する日射量の減少、日傘の日射吸収熱の増加に伴う表面温度の昇温を招くが、皮膚温度と深部体温が低下、発汗率が減少し、夏季屋外の暑熱環境の改善に寄与する結果となった。今後はこの分析から日射透過率を増加した場合における解析を行い、さらに歩行者に最適な暑熱適応策を明らかにすることが課題である。