抄録
32 歳男性が急激に発症,悪化する著しい頚部痛と発熱を訴えて外科当直外来を受診した。外傷の病歴はなく,髄膜炎が疑われたため,救急外来に紹介された。身体所見で,著明な頚部の全方向性の運動制限がみられた。頸椎Xpでは後咽頭間伱の腫脹がみられた。頚部CTでは第 2 頸椎歯突起の前方の頚長筋に石灰化がみられ,後咽頭間伱に液体貯留を伴っていた。石灰沈着性頚長筋伳炎と診断を付けた。経口の非ステロイド性抗炎症薬の内服を行い,1 週間で治癒した。石灰沈着性頚長筋伳炎は頚部痛を生じる非常に稀な疾患である。この疾患は突然に発熱や頚部痛を生じるため,髄膜炎や咽後膿瘍と誤診されかねない。総合診療医は早期診断治療ができるよう,石灰沈着性頚長筋伳炎を把握すべきである。