日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
症例報告
閉塞性尿路感染症に伴う高アンモニア血症を呈した1例
若松 真央岩田 史歩子高橋 雄介佐野 正彦鈴木 義夫長谷川 修
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2023 年 19 巻 2 号 p. 110-114

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抄録
認知症はあるがADLは保たれた91歳女性が,意識障害を主訴に来院し,尿閉に伴う尿路 感染症と診断された。脱水や腎機能障害に加え血清アンモニアが119 μg/dLと高値であり, 意識障害の原因と考えられた。高アンモニア血症をきたすような肝疾患の既往や肝障害,薬剤の使用はなく,尿検査でアルカリ尿や尿中リン酸マグネシウムアンモニウム結晶を認めたことから,ウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症が疑われた。尿道カテーテルの留置と抗菌薬による治療を開始したところ意識レベルや血清アンモニアは速やかに改善した。ウレアーゼ産生菌により産生されたアンモニアが膀胱内に留まると,尿閉による膀胱内圧上昇で伸展した膀胱壁の静脈叢から吸収される。アンモニアは肝臓を経ずに体循環に移行するため高アンモニア血症を生じる。排尿障害を有する患者の意識障害の原因として,ウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症を鑑別に考える必要がある。
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