日本病院総合診療医学会雑誌
Online ISSN : 2758-7878
Print ISSN : 2185-8136
症例報告
便秘症を契機に精神症状と発作性高血圧を発現した1症例
増田 剛太 岡本 朋加藤 剛久保田 尚子秋月 伸哉
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2024 年 20 巻 4 号 p. 195-198

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抄録
生来健康の81歳男性が便秘を契機に全身倦怠感,強い食欲不振に加え全身の異常感覚と発作性高血圧を発症した。便秘に対して大腸内視鏡検査を試行し直腸粘膜脱症候群,大腸憩室症の診断であり,発作性高血圧の原因検索で褐色細胞腫は否定的であった。繰り返す諸症状に対して精神科コンサルテーションを行い,便秘による排便困難時の記憶に起因する全般性不安障害・パニック発作と診断され支持的精神療法が試行された。パニック発作発症4 か月後に大腸憩室炎となり入院治療を行ったが,これを契機にパニック発作,発作性高血圧は消失した。 支持的精神療法に加え,大腸憩室炎による腹痛という患者にとって理解可能な身体症状を受容したことで過剰な不安から解放された結果,パニック発作や発作性高血圧が改善したと考えられた。便秘という頻度の高い症候が精神症状を引き起こし身体機能にまで大きな影響力を及ぼしうることを再認識させられた症例である。
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