2014 年 15 巻 3 号 p. 177-182
2009年4月に組織された滋賀県がん診療連携協議会・地域連携部会のこれまでの活動・成果について、第2期がん対策推進基本計画が示された事を踏まえて振り返ってみた。部会は県下統一版5大がん地域連携クリティカルパスを1年間の議論の末作成し、2010年4月から運用を開始した。議論の中心となったのは滋賀県がん患者連絡協議会、滋賀県医師会、がん診療連携拠点病院から選出された委員であった。運用開始後は周知・啓発を目的に、年2回の県の5大がん地域連携パス研修会、各医療圏で定期的に勉強会が行われている。第1期がん対策推進計画が終了する2013年3月までに、448件の5大がん地域連携クリティカルパスが登録・運用されており、内訳は胃がん196件、大腸がん222件、乳がん19件、肝がん4件、肺がん7件であった。2013年11月末現在では、602件が登録され、胃がん252件、大腸がん305件、乳がん25件、肝がん4件、肺がん9件、前立腺がん7件であった。運用件数には大きな差を認めそれぞれその原因について検討した。クリティカルパスの運用数の動向、県・各医療圏での研修会・勉強会の普及、パンフレットの配布、連携の簡素化などにより、がん医療の地域連携ネットワークは充実してきたと評価している。しかしながら、診療連携という視点では地域格差や施設間格差は構造的なものであり、 短期に是正は不可能である。人的・物的資源の格差や地域での効率的な医療連携や徹底した役割分担などを考慮に入れて、がん医療の地域連携ネットワークを再構築する事が今後の我々の課題である。