日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
抗菌薬使用状況の可視化とアウトカム評価による子宮全摘術における術後感染予防抗菌薬の適正使用化活動
鳥羽 三佳代森脇 睦子相曽 啓史貫井 陽子尾林 聡伏見 清秀
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2018 年 19 巻 3 号 p. 157-160

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抄録

 2016年4月から東京医科歯科大学医学部附属病院産婦人科において「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」に準じた予防抗菌薬の適正使用化活動(以下活動)を実施した。活動にあたって、医師・看護師・薬剤師から成るワーキンググループを結成した。まずDPC(Diagnosis Procedure Combination)データを用いて術後抗菌薬使用状況を可視化した。可視化により、リンパ節郭清を実施した子宮全摘術は抗菌薬の選択と投与期間はほぼ標準化されていたが、リンパ節郭清を実施しなかった子宮全摘術の抗菌薬選択はガイドラインとは異なり、投与期間も長いことが明らかとなった。そこで診療科医師と結果を共有し、ガイドラインに準じて抗菌薬を変更し、投与期間を短縮することになった。

 また活動の実施状況を評価するために①抗菌薬投与期間適正率と②抗菌薬適正選択率を計測し、活動のアウトカムを評価するために③抗菌薬再開率、④術後入院日数、⑤抗菌薬医療費、⑥手術部位感染発生率、⑦術後3日目以降の38.5℃以上の発熱発生率を計測することとした。①-⑤はDPCデータを用いて計測し、⑥、⑦は診療録調査も実施した。活動に伴い、抗菌薬投与量および医療費は減少したが、SSI発生率、抗菌薬再開率、発熱率、術後入院日数に変化は無かった。

 以上の産婦人科での活動を受けて、現在他の診療科においても術後感染予防抗菌薬の適正使用化活動を開始している。

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