2007 年 8 巻 2 号 p. 344-349
輸血療法の過程で発生するヒューマンエラーによる過誤輸血およびABO型不適合輸血は、輸血療法における最大の問題である。当院では輸血の安全な運用を目的に患者リストバンドと血液製剤のバーコードを照合する輸血照合システムを導入した。今回、輸血照合システム導入の有効性と課題を明らかにすることを目的に、輸血照合システムを使用する医療スタッフおよび輸血療法を受ける患者を対象に質問紙調査を行った。その結果、輸血照合システムを使用する医療スタッフと患者の安全性への評価が高かった。また、輸血をする患者だけでなく医療スタッフの安心感も高まることが明らかになり、医療サービス向上および医療スタッフの業務支援に有益であると評価できた。また、運用の改善により血液製剤の返却率や廃棄率も減少した。輸血照合システム導入と運用の再構築は、ヒューマンエラー防止による安全性の向上に加え、患者サービスの向上や血液製剤の適正使用に繋がると考えられる。