日本医療マネジメント学会雑誌
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医療事故当事者サポートマニュアル
深野 久美七井 裕子芳賀 克夫
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2008 年 9 巻 2 号 p. 364-368

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抄録

医療事故に関わった医療従事者のサポートの必要性は従来から述べられているが、病院が系統的なサポートを実践するための手順を示したマニュアルの報告は少ない。今回、国立病院機構本部九州ブロック事務所では、事故当事者に対するサポートマニュアルを作成したので、その内容を紹介する。(1) 幹部管理者は事故直後から現場を積極的に支援し、現場スタッフが行った的確な行動を認める発言に心がける。(2) 最初の家族への説明は、主治医や看護師長、幹部管理者等で行い、事故当事者となった看護師や経験の浅い医師等は同席させない。(3) 事故当事者に過失があるかどうかは、十分な検証作業が終るまで結論を出さない。(4) 院内で事故当事者を含めて事故の検証委員会を開催し、厳正に、且つ、配慮を持って事故を検証する。(5) 検証作業で事故当事者の過失が明らかになっても、幹部管理者は事故当事者を非難・叱責するような言動を慎む。事故当事者と事故を振り返り、同じような事故を再び起こさないためには、どうしたらいいかを話し合う。上記内容を、12回に及ぶ研修会で管内の病院職員に周知したが、病院職員からは病院、ブロック事務所への信頼感が増したとの声が多く寄せられた。従って、本マニュアルは、病院職員の組織への信頼感醸成に有用であると考えられる。今後、本マニュアルが事故当事者の離職率の減少などに貢献したか検討していきたい。

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