日本医療マネジメント学会雑誌
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感染対策としての酒精綿単包化は医療コストを増大させない
坂本 篤彦泓 ヨシ子泉 早苗林 理恵下村 和佳恵武藤 敏孝尾上 泰弘岡嶋 泰一郎
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2008 年 9 巻 3 号 p. 467-471

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抄録

アルコール含有綿 (酒精綿) の単包化製剤は、院内調整製剤やパック製剤よりも感染対策上望ましい。しかし、割高な単価によるコスト上昇、個別包装開封の手間による利便性低下、の2点に対する懸念が、導入を躊躇させる主因であると思われる。
当院では以前より糖尿病患者のインスリン自己注射等に限って単包化酒精綿を使用してきたが、感染対策の観点から2006年6月より全病棟・外来で単包化酒精綿を導入して、従来の100枚入りパックからの移行を進めている。
今回われわれは酒精綿単包化に伴う酒精綿のパック製剤・単包化製剤それぞれの使用量と購入額の変化を評価した。単包化製剤の全体に占める使用率は経時的に増加し、2007年2月には70%を超えた。一方、酒精綿の単価は上昇したが使用量は半減し、その結果、酒精綿にかかる総コストは増加しなかった。単包化により1回あたりの使用量が適正になり無駄な使用を避けられる事が、使用量減少とコスト低下に寄与したものと考えられた。
また、導入後の病棟看護師を対象としたアンケートでは、パック製剤よりも単包化製剤を使いたいという意見がほとんどを占め、その理由として清潔や感染対策のほかに携帯性に優れる、使い勝手がよいなどの利便性向上を挙げるものが多かった。
以上のとおり、酒精綿単包化により、コストは上昇せず利便性は向上しているとの結果が得られた。これらの結果は、酒精綿単包化の推進を支持するものであった。

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