2022 年 68 巻 1 号 p. 57-60
喉頭摘出後にプロヴォックス® を留置し、その後プロヴォックス® が不要となり、抜去した後、気管食道瘻が閉鎖するまでに長期間を要した 2 例を報告した。1 例はプロヴォックス® を抜去して 8 カ月後に瘻孔が出現し、縫合で閉鎖したが、その 5 カ月後に瘻孔が再発し再度縫合術が必要となった。もう 1 例は複数回の縫合術で閉鎖せず、経鼻経管栄養中に逆流した胃内容物を誤嚥した。皮弁を用いて瘻孔を閉鎖する手術を予定したが、手術待機中に再度逆流した胃内容物を誤嚥した。胃瘻を造設し瘻孔は閉鎖した。今後高齢化が進み、プロヴォックス® を留置しても発声ができなかったり、発声が獲得できても体調の悪化から発声しなくなるなどして、プロヴォックス® を抜去する症例が増加することが予想される。プロヴォックス® 留置前には、既往歴に留意し、抜去後に複数回の縫合術が必要になり得ること、逆流した胃内容物の誤嚥等の合併症を起こし得ることを十分に説明する必要がある。