抄録
患者がある頭位をとつた時にだけ, 一過性にめまいが起こり, その時回旋眼振を観察できるものを, Dixらはpositional nystagmus of the benign paroxysmal typeと呼び, メニエール病とは別の疾患であると言つた. しかし私は, メニエール病の経過中にこのような発作をおこした例を, 1988年1年間に6例経験した. メニエール病の発作の時に見られる水平眼振と, これらの回旋眼振は方向を逆にする者が多かつた. またこれらの症例は, 聴力像, 温度検査の左右差が少なかつた. 歩行検査では特徴ある偏筒を認めた. これらのことから, この病態は独立した疾患ではなく, 内耳の耳石器に限局した興奮状熊夕示すものだと考えた.