日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
栃木県における新生児聴覚検査事業と精密聴力検査の結果
深美 悟中村 真美子馬場 廣太郎平林 秀樹春名 眞一市村 恵一石川 浩太郎
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2009 年 112 巻 2 号 p. 66-72

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抄録

新生児聴覚検査事業は, 聴覚障害の早期発見・療育を目的として新生児聴覚検査を実施し, マススクリーニングに適した実施法, 療育・支援体制を検討するモデル事業であり, 栃木県でも平成14年から事業を開始した. 自動ABRを施行した6,198人中, 再検査数 (初回自動ABR検査でreferのため, 再度自動ABRを行った数) は71人 (1.1%), 要精密聴検数 (再検査で一側あるいは両側referのため睡眠下ABRが必要であった数) は44人 (0.7%) であった. 初回精密聴検の結果, 両側難聴例を20人認めたが, 最終的には両側難聴例は17人であった. 自動ABRと睡眠下ABRの不一致例は, 自動ABR偽陽性例7例, 偽陰性例3例に認められたが, 全例最終聴力は正常範囲となった. 新生児聴覚スクリーニングにより難聴児の早期発見が可能となった一方で, 難聴児に対する療育, 支援体制が十分に整っていない現状からも, 関連部門との密接な連携, 乳幼児健診制度との連携, 小児難聴に精通した人材の育成, 配備と難聴療育施設の整備が急務であり, 現時点では全出生児に対して新生児聴覚スクリーニングを行うのは困難と考える.

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© 2009 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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