日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
総説
感音難聴とめまい: 病態はどこまで分かったか
—蝸牛虚血性障害, 音響性障害に対するグルココルチコイド治療—
田渕 経司原 晃
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 113 巻 11 号 p. 831-837

詳細
抄録

グルココルチコイド製剤は急性感音難聴治療において頻用されている薬剤であるが, 急性感音難聴治療におけるグルココルチコイド製剤の効果についてはいまだ一定の見解が得られていない. 本総説ではグルココルチコイド製剤の蝸牛虚血性障害, 音響性障害に対する効果について, 実験動物を用いた検討から得られた近年の知見について概説した. 動物実験における検討からはグルココルチコイド製剤全身投与ではグルココルチコイド製剤の良好な内耳移行が認められ, 本薬剤は蝸牛虚血性障害, 音響性障害に対し, 保護効果を有することが確認されている. グルココルチコイド製剤は両障害において音を感受する蝸牛有毛細胞に関しても保護効果を有することが確認されており, その保護機序については, 細胞質内グルココルチコイド受容体を介するgenomic pathwayが関与することが示唆されている一方, 非特異的な保護作用であるnon-genomic pathwayを介する経路も存在することが推察される. 音響性障害における検討から得られた知見では, グルココルチコイド治療のtherapeutic time windowは障害受傷後比較的短いと考えられ, 受傷後早期の治療が肝要であると考えられた. グルココルチコイド製剤の急性感音難聴治療における使用にあたり, 動物実験から得られた知見は本治療の理解に重要であると考えられた.

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
次の記事
feedback
Top