2010 年 113 巻 11 号 p. 851-855
悪性外耳道炎 (MEO: malignant external otitis) は主に高齢の糖尿病患者に発症する難治性の外耳道炎で, しばしば頭蓋底骨髄炎 (SBO: skull base osteomyelitis) を伴い致死的となる. 感染が重症化する一因として, 糖尿病や緑膿菌感染に起因する病変部位の血流障害が挙げられる. われわれは, 抗菌薬の静脈注射と外科的デブリードマン後も増悪してSBOを合併した2例のMEOに対し, 抗菌薬の局所濃度を高める目的で外頸動脈領域に抗菌薬の動脈注射 (動注) を施行した. 動注直後より症状は軽減し, 動注後さらに経静脈・経口抗菌薬投与を継続すると炎症は著明に改善して, 画像上も頭蓋底に軽度残存するのみとなった. 以上の結果から, 既存の治療に抵抗するMEOに対しては, 抗菌薬動注が有効な治療法であると考えられる.