日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
原著
外傷性鼓膜穿孔に関する臨床的検討
山崎 一春石島 健佐藤 宏昭
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 113 巻 8 号 p. 679-686

詳細
抄録

当科における外傷性鼓膜穿孔について臨床的検討および文献的考察を行った.
対象は2000年1月から2008年12月までの9年間に当科を受診した新鮮例で, 男性73耳, 女性92耳の計165耳. 受傷原因は直達性が103耳で, その多くは耳かきによる外傷であった. 介達性外傷は62耳で, 平手うちや殴打といった暴力に伴うものが33耳と多くみられた. 穿孔の大きさは吉川らの分類に従ったが, 最も多かったのはGrade Iの129耳78.2%で, 穿孔が大きくなるにつれ例数は減少した. 穿孔の部位は前下象限が98耳と最も多かった. 対象のうち保存的治療で穿孔の閉鎖を確認しえたのは85耳で, 平均閉鎖期間は25.9日であった. 穿孔が大きくなるほど閉鎖までの期間は長くなった. 治療内容については点耳薬と抗菌薬投与を併施されている群が最も多く, 治療しない群は少なかった. 結果として自然閉鎖率は85.9%であり, 他の報告と比べても良好な結果であった. 保存的に閉鎖せず手術を施行した例は14耳で, 手術までの観察期間は平均184日であった. 手術により平均聴力 (3分法) はほとんどの例で改善したが, 耳小骨骨折と外リンパ瘻を来した2耳は改善しなかった. また, 4耳は術後に再穿孔を来し, さらに真珠腫を続発した例もあった.

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top