日本耳鼻咽喉科学会会報
Online ISSN : 1883-0854
Print ISSN : 0030-6622
ISSN-L : 0030-6622
総説
耳管疾患の最前線
—多列検出型CT機器による耳管形態と機能の解析—
吉岡 哲志
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 114 巻 6 号 p. 547-556

詳細
抄録

耳管は, 中耳の換気, 異物排除, 病原体からの防御の3機能をもつ. これらの機能傷害によって各種中耳疾患が惹起されるため, 耳管の形態・機能の検討は重要である. しかし耳管は顔面深部に位置し, 生体におけるその検討は, 従来困難を極めた. 特に形態学的な検討は, 先人による検討のほとんどは屍体標本を利用している. これらの検討では, 生体の状況を反映しておらず, また多数の標本をもとにした検討は困難であった. 一方, 多列検出器型CTは, 等方的で空間分解能に優れた画像を高速で取得する. CT技術を耳管の検討に適用することにより, 生体における耳管の描出, 形態学的研究に新たな知見が加わる. 特に最新の320列面検出器型CTでは, 動的な評価も可能である. 本稿では多列検出器型CTによる耳管の形態と機能の解析について, 一般的な知識と最新の知見について概説した. まず, マルチスライスCTによる耳管の描出例を, 画像解剖とともに示し, バルサルバ負荷撮影により軟部組織がより明瞭に描出できることを示した. 次に, マルチスライスCTにより, 耳管の立体解剖学的計測が可能であることを示し, 同手法により明らかになった年齢と計測値の具体的な関係について示した. 最後に, 高速多列面検出器型CTにより, 時間的に連続した立体画像データが取得でき, 耳管の動的な解析に利用できることを示し, 嚥下時および, 耳管開放症患者の鼻すすり時の耳管運動について例示した.

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top