日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
小児の気管切開 適応と留意点
守本 倫子
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2012 年 115 巻 11 号 p. 939-943

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抄録

気管切開の目的は大きく分けると, 上気道狭窄に対する気道確保と呼吸管理の2つが挙げられる. 近年小児の気管切開が増加してきた理由は, 以前であれば出生直後に死亡していた可能性の高い多発奇形合併児や重症仮死児, また重篤な頭部外傷や窒息も新生児医療や救急医療の発達により救命できるようになったことと関係がある. われわれの施設にて2002年6月から2012年4月までに気管切開を行った18歳未満の児は166例であり, 1歳未満は79例 (47.5%) とほぼ半数を占めていた. さらに原因疾患は2歳以下では上気道狭窄, 3歳以上では神経疾患や蘇生後の脳症が多かった. 166例中27例 (16%) は死亡の転帰をとったが, そのうち気管切開関連での死亡例は3例であり, それ以外はほぼ原疾患に関連する原因であった. また, 24例 (14%) はカニューレ抜去が可能であったが, これらの症例の多くは喉頭狭窄など解剖学的な上気道狭窄があり, 成長と共に改善した症例であった.
気管切開の合併症や周術期のリスクをいかに減らすかということを常に念頭に置きながら, 気管切開後の呼吸状態や将来的にカニューレ抜去ができる可能性, 気管切開後に続けて行う予定の手術や注意点なども含めて, 家族と綿密なコミュニケーションをとって対応していく必要があるだろう.

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