J-STAGE トップ  >  資料トップ  > 書誌事項

日本耳鼻咽喉科学会会報
Vol. 115 (2012) No. 11 p. 957-964

記事言語:

http://doi.org/10.3950/jibiinkoka.115.957

原著

ヒト乳頭腫ウイルス (HPV) 関連中咽頭癌はHPV非関連癌と比べ, 化学療法や放射線治療に対する感受性が高く予後良好であるが, その理由は明らかでない. フルオウラシル (5-FU) の標的酵素であるThymidylate synthase (TS) の腫瘍内の過剰発現は, 5-FUに対する抵抗性や予後不良因子となることが多数の癌腫で報告されている. そこで, 当科で一次治療を行った未治療中咽頭癌54例を対象にHPV感染とTS発現の相互関係および臨床像との関連について検討した. HPV陽性は22例 (40.7%), HPV陰性は32例 (59.3%) で, TS高発現は25例 (46.3%), TS低発現は29例 (53.7%) であった. TS高発現例の76.0%がHPV非関連癌 (p=0.02) で, 84.0%が多量喫煙者 (p=0.012) であった. 5年累積粗生存率はHPV陽性例で77.3%, HPV陰性例では29.0%とHPV陽性例が有意に予後良好であった (p=0.006). また, TS高発現例が31.9%に対しTS低発現例は60.7%と予後良好であるも有意差は認めなかった (p=0.12). 多変量解析により早期のT, N stage, およびHPV陽性が独立した予後良好因子となっていた. 結果として, TS発現と中咽頭癌治療の奏功性や予後との関連は認められなかったが, TSは興味深いバイオマーカーであり, その発現機序の解明が必要と思われた.

Copyright © 2012 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会

記事ツール

この記事を共有