日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
頸部リンパ節結核29症例の臨床的検討
—診断における低侵襲な穿刺吸引法の位置づけ—
三橋 拓之千年 俊一前田 明輝三橋 亮太梅野 博仁中島 格
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2012 年 115 巻 12 号 p. 1037-1042

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抄録

目的: 頸部リンパ節結核の診断は主に外切開法による組織診断が行われている. しかし外切開法は手術侵襲による患者の負担などが問題点として挙げられる. 近年, 外切開法を行わずに穿刺吸引法による細胞診や結核菌のPolymerase Chain Reaction (PCR) 検査の有用性が報告されている. われわれは頸部リンパ節結核の診断においてより迅速でかつ低侵襲に行える検査法について検討した.
対象と方法: 頸部から検体を採取された29例中, 外切開法による組織診を21検体に, 穿刺吸引法による細胞診を20検体に行った. 結核菌検査として塗抹を20検体, 培養を20検体, PCRを14検体に行った. 補助診断としてクオンティフェロン検査 (QFT) を11例に, ツベルクリン反応 (ツ反) を27例に行った. 検査の陽性率を算出し, 検体採取法別に検査陽性率, 創部の自潰率, 診断までの日数を比較した.
結果: 結核陽性率は細胞診が40%, 塗抹が20%, 培養が40%, PCRが64%, QFTが82%, ツ反が74%であった. 穿刺吸引法は塗抹検査において陽性率が高く (p<0.05), 診断までの日数が短かった (p<0.001). 外切開法は検査後の創部自潰率が高い傾向にあった (p=0.05).
結論: 頸部リンパ節結核の診断は, まず低侵襲な穿刺吸引法による細胞診および塗抹, 培養, PCR検査をツ反やQFTの補助診断と併行して行い, それでも診断がつかない場合に外切開生検に踏み切るべきである.

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© 2012 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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