日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
中耳真珠腫の部位別進展度別手術成績
北原 糺三代 康雄阪上 雅史鎌倉 武史森鼻 哲生猪原 秀典
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2012 年 115 巻 2 号 p. 91-100

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抄録

(目的) 日本耳科学会が提唱する中耳真珠腫進展度分類2010改訂案に準じて, 鼓室形成術の自験例を省み, 進展度が手術成績に与える影響を検討した.
(対象と方法) 平成9年4月から平成22年3月の間に鼓室形成術を施行し, 12カ月以上経過観察した後天性1次性中耳真珠腫149耳 (弛緩部型109耳, 緊張部型40耳). 中耳真珠腫進展度, 術式, 伝音再建型, 術後12カ月の聴力改善成績, 手術合併症, 術後再発を来した症例に関して検討した.
(結果) 弛緩部型の成功率79.0%, 進展度stage I—90.0%, stage II—78.7%,stage III—73.3%, 伝音再建型I型—88.9%, IIIc型—84.0%,IVc型—30.0%であった. 緊張部型の成功率73.3%, stage I—75.0%,stage II—12例75.0%, stage III—70.0%, I型—100.0%,IIIc型—86.7%, IVc型—50.0%であった. 手術合併症は弛緩部型, 緊張部型とも, stageが進むと増える傾向にあった. 再発例は弛緩部型9例, 緊張部型4例で, いずれもstageの進んだ症例, 一期的手術とした症例, 外耳道後壁を保存もしくは再建した症例, 術後5年以内の再発が多い傾向にあった.
(考察) 聴力改善成績は進展度分類よりむしろ, アブミ骨上部構造の有無に影響される. stageが進むと手術合併症, 再発が多いことから, 進展度分類は術中操作, 術後経過観察に有意義である. stageの進んだ症例は状況に応じて, 段階手術や外耳道後壁の十分な削開を伴う乳突開放型の一方または両方を考慮する必要がある. 術後5年以内の再発例が大半であり, 少なくとも5年は経過観察していく必要がある.

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