日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
わが国のワクチン行政の現状と問題点
中山 哲夫
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キーワード: 予防接種, ACIP, 予防接種政策
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2012 年 115 巻 6 号 p. 605-611

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抄録

感染症対策にワクチンの果たしてきた役割は大きく, ワクチンで予防できる疾患はワクチンで予防する基本的な方針で欧米は積極的にワクチン政策をすすめてきた. 一方, わが国では種痘禍, ジフテリア・百日咳・破傷風 (DPT) の事故, 麻疹・風疹・ムンプス (MMR) スキャンダルと予防接種に関する訴訟が続き積極的な予防接種政策を執ることができなかった. ワクチンメーカーも新規ワクチン開発や外国からの導入もなく空白の十数年が経過し, その間欧米においては1990年代にはインフルエンザ桿菌ワクチン (Hib), 結合型肺炎球菌ワクチン (PCV) が開発され日本発の無細胞型百日咳ワクチン (DTaP) をベ-スに多価ワクチンの開発と積極的に予防接種政策を推し進めてきた. ワクチンの品目, 制度の違いからワクチンで予防できる疾患 (vaccine preventable diseases: VPD) の流行が制圧できずワクチンギャップとして問題視されてきた. 最近になって2008年にはインフルエンザ桿菌ワクチン (Hib), そして2010年春から小児用の結合型肺炎球菌ワクチンが使用できる様になった. わが国の予防接種政策が立ち遅れた原因は何か, そしてこれからの予防接種対策について考えてみたい.

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© 2012 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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