日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
口蓋扁桃摘出術を行ったIgA腎症の予後因子
田畑 貴久大淵 豊明北村 拓朗大久保 淳一橋田 光一寳地 信介若杉 哲郎加藤 明子鈴木 秀明
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2012 年 115 巻 9 号 p. 836-841

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抄録

IgA腎症に対する治療法のひとつとして, 口蓋扁桃摘出術 (扁摘) が挙げられる. 本研究は, 扁摘を施行したIgA腎症患者の術後の腎機能の寛解を推定し得る術前予後因子を明らかにすることを目的とした.
対象は当科で扁摘を施行したIgA腎症患者40例 (男性21例, 女性19例; 平均年齢25.5歳) を対象とし, IgA 腎症診療指針に準拠して寛解群と非寛解群とに分類した上で, 性別, 年齢, 罹病期間, ステロイドパルス療法の有無, 血圧, 扁桃肥大の程度, 定性尿蛋白, 定量尿蛋白, 尿潜血, 血清総蛋白値, 血清尿酸値, 血清クレアチニン値, 血清IgA値, 抗ストレプトリジンO抗体値, 腎組織障害度, 摘出扁桃の病理組織所見について, 2群間で比較検討を行った.
手術1年後に寛解と判定された症例は13例, 非寛解群と判定された症例は27例であった. 寛解群において, 非寛解群に比し有意と認められた事項は, (1)発症から扁摘を施行されるまでの罹病期間が短いこと, (2)血圧が低値であること, (3)血清総蛋白値が高値であること, および(4)扁桃肥大の程度が高度であること, の4項目であった. (3)と(4)については, 多重ロジスティック回帰解析でも同様の結果が確認された.
IgA腎症の治療に際してはその病態を十分理解した上で, 上記のような術前予後因子を念頭におき, 扁摘の有効性を検討することが望ましいと考えられた.

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© 2012 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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