日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
上咽頭癌診断治療の進歩
―EBウイルス発見から半世紀間の歩み―
吉崎 智一
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2013 年 116 巻 11 号 p. 1175-1184

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抄録
上咽頭癌はEpstein-Barrウイルス (EBV) 関連腫瘍である. 1964年にEBVが発見されて今年で50年, この間に上咽頭癌とEBVの病因論的な関連性, 高転移性という病態との関連性はかなり解明が進んだ. EBV遺伝子発現が細胞の分化を抑制し, 上皮間葉移行を促進する. このEBV遺伝子として潜伏感染時に細胞膜に発現するLMP1が重要であることが解明された. このEBV関連腫瘍としての上咽頭癌は高転移性である. 一方で, 化学放射線治療にも感受性が高い. したがって, 頭頸部癌の中にあって, 化学療法の治療ウエイトが高い癌であり, 放射線治療や化学療法の進歩により治療成績は向上しつつある. 従来のリニアック照射と化学療法の上乗せでは後者が有意に優れた治療成績を示したIGS0099 スタディ以降, この臨床試験における化学放射線レジメンはグローバルスタンダードとなっているが, 完遂率が低いことが問題とされている. 日本では交替療法がこの試験を上回る治療成績を示すことが報告され, それを追試すべく多施設共同試験が行われた. 今後, 放射線の主役はIMRTとなることが予想される. 放射線治療+分子標的薬の有効性については今後の課題である.
一方で, この普遍的にヒトに感染しているウイルスが「なぜ一部の地域に高頻度に上咽頭癌やバーキットリンパ腫を発生させるのか」や「ウイルスレセプターが陰性の咽頭上皮にどのように感染するのか」などの根本的な疑問はいまだに解決されていない.
実験的な段階ではあるが, 抗ウイルス剤やウイルス遺伝子産物に対する免疫療法などのウイルスをターゲットとした治療法に関しても着実に成果が上がってきている.
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© 2013 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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